ある日のバトルメード

宮廷の近衛兵として警備に勤め、
宮廷のメードとして王国の運営を支え、
戦場の要所に切り札として出撃するのである。

彼女達は最上級の訓練と教育を受けた士気高く勇猛な至高の兵士であり、
王国に仕える最高の品格と無私の心を備えたメードである。

   ~ビギナーズ王国 公式文書 バトルメードの心得より抜粋~


ここは王宮の更衣室。
任務で汗を流した彼女たちが、身にまとったメード服を脱ぎ去り、唯一真の姿を解放する場である。
今日もそれぞれの任務を終えたメード達が次々とやってきた。

箒型銃を立てかけ、多機能カチューシャを外すと、白く美しく伸びた髪がくびきをとかれる。
かすかな衣擦れの音を立てながらリボンをほどき、丁寧にドレスのボタンを2つほど外す。
襟元が開かれ、わずかに胸元があらわになる。

そして、エプロンが、次にドレスが、あくまでエレガントに脱ぎ去られると、彼女たちはメードから元の男性へと解放されるのだった。


「いやぁ~、つっかれたぁ~」
下着姿のピストンは側に置いてあるベンチに体を投げ出して体を休めている。
「はしたない格好をしないで下さい。」
未だにドレスを脱ぎ終えていないタルクは依然として優雅な口振りでピストンをたしなめた。
ピストンは気怠そうに顔だけタルクに向けて返事をする。
「いや、タルクさんも早く着替えちゃって下さいよ。」

ビギナーズ王国が誇るバトルメードのほとんどが男性によって構成されていた。
彼らはバトルメードとして、メード服を着込み女装して任務にあたっているのだった。


ピストンは改めてベンチに座り直し、タバコに火を付けながらタルクに話しかけた。
「それにしてもなんでこんなことになっているんすかね?」
「タバコ吸うなら喫煙室いってくださいよ。」
更衣室は禁煙である。タルクはメード服を脱ぎ終えたとはいえ、ルールに従ってピストンを注意した。
ピストンは慌ててタバコをポケット灰皿にねじ込みながら、タルクに謝る。

「それで?何の話?」
「いやね、メードが男性ばかりなんて、と思ったんですよ。帝國の規定だとバトルメードって女性兵士のことになってるんすけど」
「女性・・・ねぇ」
タルクは今更のように考えこむと、
「外見は問題じゃない! 魂のあり方が・・・とかいってごまかすか?」
勢いに任せるようにピストンの疑問に答えた。

「いや・・・タルクさん、魂のあり方、女性なんですか?」

 ・
 ・
 ・

「そ、そういえば、タルクさん。また男のメード増えるらしいですよ」
ピストンが慌てて話を振る。
「うちの藩王様の趣味、なんてことはないですよね?」
あまりに慌てて話題が切り替わっていなかったりもする。
「いや・・・でも藩王さま自身あんな格好だしなあ・・・」(注:ビギナーズ王国藩王たくまのアイドレスもバトルメード)
タルクが我に返ったように再び悩み込んでいると、更衣室のドアが開いた。


「こんな時間まで何やっているんですか?」
鬱々とした雰囲気を打ち壊すにこやかな笑顔とともに現れたのは摂政のSOUだった。
ちなみにSOUのアイドレスは「北国人+パイロット+整備士+テストパイロット」である。

タルクとピストンは、なぜここに?と一瞬唖然とする。
しかし、相手は摂政様である。二人とも慌てて直立する。
「アイドレスの規定についての確認をしておりました」

ピストンの答えを「そうですか」と聞き流すと、SOUは何やら鼻歌を歌いながらツカツカと中に入ってくる。

SOUの行動の目的が分からず、焦ったピストンは、
「まさか今の話聞かれてないですよね?」
と、タルクに小声で話しかける。
「い、いや・・・まさか」
「じゃ、なんで入ってくるんですか?」
「そんな・・・私に聞かれても。。。」
SOUはフランクな摂政だとは知られているが、藩王批判など摂政の耳に入ったらどうなるか分からない。
下手をすれば打ち首獄門?


そんな二人を尻目にSOUはロッカーの前に立つと、いそいそと着替えを始めた。
あっけにとられながらも、ピストンが質問する。
「摂政様?何やってらっしゃるんですか?」
「ん?着替えですよ。着替え。今から芥藩国いってバトルメードやってくるんですよ♪」

「・・・」
「・・・」

「それではお二人ともごきげんよう。これから芥辺境藩国様に伺ってご奉仕してきますわ。うふふっ」
着替えを終えたSOUは気色の悪い笑い声を残して去っていった。


「我が国のダークサイドはあなたでしたか」
ピストンの疑問は解決したが、ビギナーズ王国の将来には暗雲が立ちこめていた。


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あとがき

えーっと、SOUさん。すみません。オチに使いました。
一応藩国チャットの会話にちょこっと脚色を加えてみました。
タルクさんと男性BMのSS書いてみたいね~と話をしていたので、書けてよかったです。

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