え~藩国出張記 第1話 「奉仕令 第八号」

 奉仕令 第八号
             80307002
                摂政 SOU

  SOU
  yuzuki
  タルク
  ピストン

1.以上の者は来たる帝國の治安動員に参加すること。
2.現時刻をもって出撃待機とする。
3.細項については参謀部決定による。

   ~ビギナーズ王国軍機密文書 軍令資料集より~


「マジっすか!?」
日頃の教練を終えて帰宅しようとしていたピストンは、軍令部付き犬士から命令を受け取り思わず声を上げた。

教練や事務仕事もそこそこに自宅に引き籠もっているピストンは王国にとってお荷物、あるいは居るだけの存在、といっても過言ではない。
過日の「バトルメードisナンバー1」作戦、わんわん帝國のメードを総動員した作戦であったが、ピストンは国王と共に王国待機であった。
藩王護衛、という名目であったが、ありていに言えばサボっていたのだった。


「よぅ!何ぼさっと突っ立ってるんだい?」
勢いよく声をかけてきたのはメード部隊の先輩タルク。

「あっ、また出撃か。お次はどこの国かな?」
文族であるタルクは従軍記録官も兼ねるため、自らの文才を発揮する機会を与えられて早速意気込んでいる様子だ。


ピストンとしては、どうやって切り抜けたものか?と困ったところだが、まるっきりやる気がないわけでもない。
王国唯一の女性メードyuzukiの名前がリストにあったからだ。
「yuzukiさんと出張なら願ったり叶ったりだなぁ~」
技族としても活躍するyuzukiは、ピストンの参加する通常訓練には参加しないため、普段は会う機会も乏しい。
それが二人っきりで遠国まで出張ともなれば、心躍るのも仕方がない。少なくともピストンはそういう人間だった。


「ん?どうしたぁ!?」
変な気分に浸っているピストンに水を差すように陽気な声をかけてきたのは、王国の誇る摂政SOUである。
公務にあたっては冷静沈着、縦横無尽、八面六臂の活躍を見せる我らが摂政様だが、勤務時間外や非公式の場では陽気で快活なただの摂政に切り替わる不思議な人物だ。
「お~、ようやくメードデビューの舞台か。腕がなるね~♪」
大体あんたが噛んでる決定だろ、と内心ツッコミを入れながら、仮にも摂政様なので相応の返事を返しておく。

「どうやらFEGへいくことになるかもしれないな」
先ほどまでの緩みきったSOUの顔が急に引き締まる。
「えふいーじー・・・ですか?共和国の?」
タルクが驚きつつ、聞き返す。
「そうだ。先ほど、参謀部に呼び出されてな。あちらの戦況が思わしくないらしい。」
「それって・・・利敵行為なんじゃないですか?」
ピストンが噛みつく。建前上は帝國と共和国は戦争状態にある。
たけきの藩国王たけきのこがFEGの保護下にあることなぞ、一兵卒には知りようがない。

「そんなことはない。帝國にも、この世界にも、必要なことなんだよ。」
SOUは少し遠くを見つめながら、星見司のような口振りでつぶやいた。

---*---

FEGの死闘は是空王の英断によりメードが派遣されることなく終結した。
しかし、帝國各国のメード動員体制は維持された。
戦火は世界各地に広がりつつあった。


 え~藩国出張記 第2話 「宮廷の激闘」 につづく

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