え~藩国出張記 第2話 「宮廷の激闘」

ドンドンドン!!
ドンドンドン!!

「ん~?」

ガンガンガン!!
ガンガンガン!!

「んぁ~」

「ピストンさん!出動です!起きてください!!」
「ん~~、あとちょっと~」

「あぁ、もうっ!入りますっ!」
ピストンの眠る待機室内にメード服を身にまとったタルクが入ってきた。
「起きなさいっ!」
勢いよく布団を引きはがされたピストンはまぶたをこすりながら起き出した。
「タルクさぁ~ん。なにするんすかぁ~」
「はい、これ。命令書です。え~藩国行きますから、早くしてください!」

「んぁ?」
「ん?」
「え~っ!!!」


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 奉仕令 第九号
             01307002
               藩王 たくま

  SOU
  yuzuki
  タルク
  ピストン

1.SOU、yuzukiは後ほねっこ藩国に赴き、
同軍と協力し、軍務を遂行せよ。
2.タルク、ピストンはえ~藩国に赴き、同軍と協力し、
軍務を遂行せよ。
3.細項については参謀部所属S×Hならびに各藩国
の藩王の指示を仰ぐこと。
4.奉仕令 第八号は無効とする。

   ~ビギナーズ王国軍機密文書 軍令資料集より~

---*---

「なんじゃこりゃ~っ!!」
新たな命令書を突き付けられたピストンは、ずれたカツラを気にも止めずに声を上げた。
「書面の通りです。私達も準備が整い次第、任地へ向かいます。さぁ、準備を。」
慌ててピストンに背を向けたタルクは、部屋を出ながらそう告げた。
カツラの着用をピストン本人は隠しおおせていると思っている。
背を向けて話すなど礼に反しているが、気遣いのためなら礼を失するのも礼のうちだ。

「くそっ、先手を取られた。サボり損ねた。サボり損ねたっ!」
ブツブツ言いながらも外にタルクを待たせているので、慌てて身支度を調える。
「しかも・・・唯一の楽しみまでが・・・yuzukiたんっ!!」

一旦、身支度を調えた後、再び更衣室に駆け込んでメード衣装に着替える。
慌てて飛び出してきたピストンを一瞥したタルクが顔をしかめる。
「なんですか、その格好は。。。」
「リボンが曲がっています!プリーツが乱れています!靴ひもがゆるんでいます!ドレスの結び目がゆがんでいます!カチューシャがずれています!それに・・・」
「まだあるんですかぁ~?」
「これから遠征行くのに宮廷用装備着込んでどうするのですかっ!室外用装備に着替え直してきなさいっ!」
「・・・あれ?」
自分の服装を見直して、慌てて更衣室に戻るピストン。
「もう。いい加減にしてください。」
さすがにタルクもへたりこんでいた。

---*---

改めて室外用装備に着替えた後、相変わらず服装を直されて、ようやく準備が整ったピストンとタルク。
二人は藩王たくまに拝謁し、出発の報告をしようと謁見室へと足を運んでいた。

「yuzukiたんが。。。yuzukiたんが。。。」
「何ブツブツ言っているのですか。しゃきっとなさい。」
謁見室へ続く廊下を歩いていると、同じくメード服を身にまとった摂政SOUが通りかかった。
「あっ、ピストン。お待ちなさい!」
タルクの静止の声もむなしく、ピストンは有無を言わさず走り寄る。
「ずるいや!摂政だからって!」
「は・・・はい?」
まるで子供のような不平の言葉に、何のことか分からずうろたえるSOU。
「め、メードの紅一点を・・・横暴だっ!」
ピストンは今回の遠征の唯一の楽しみだったyuzukiとの遠征を奪われた怒りをぶつけていたのだった。
それを察したSOUは底意地悪い笑みを浮かべてピストンと対峙する。
「あちゃー、摂政のあの笑顔がでちゃったよ。」
後ろであっけにとられていたタルクはSOUの表情を見て、ピストンを哀れんだ。
「ふふん、貴様なんぞがおこがましい! 立場をわきまえよっ!」
SOUは派手にコートを翻してピストンに言い放つ。
王国に置いて「立場」などという言葉は平時の建前であって、本音のやり取りでは何の意味もなさない。ましてや相手が摂政ならばなおのことだった。
「聞けば根源力31000以下瞬殺のトラップもあるようなので、せいぜいお気をつけを。。。」
ピストンは敢えて礼を取るようなそぶりをしながら、SOUを牽制する。
「いや、俺の根源力は、いまや34000!!」
「ちぃ」
傲然と言い放つSOUがさらにたたみ掛ける。
「護民官も勤め上げたら39000だっ!!」
「はっはっはっ、おびえろすくめ!根源力をいかせぬまま死んでしまえ!」
すっかり別の世界に入り込んだように高笑いを続けるSOU。

「きぃ~、メードでは新人のクセに生意気よっ!」
すっかり打ち負かされたピストンは、窓枠に指をこすりつけてSOUに突き付ける。
「まだ、ここが汚れているじゃない!掃除のし直しよっ!!」
「い、いや、それは流石に無茶がありますよ」
冷静につっこむタルク。一方、SOUは待ってました、とばかりに邪悪な笑みを浮かべる。
「ふっふっふっ、先読みがあたりましたね。あなたがそう来るのは読めてましたよ。」
たじろぐピストンを見据えながら、さらに続ける。
「私とyuzukiさんはI=D要員なのだよ。ピストン君。
ことI=Dにかけては元パイロットである私が選ばれて当然!
・・・掃除?そんなことはどうだっていい。
今に求められているのは戦争!そう、戦争なのだよ!!」
そう言い放つと、姿勢を正して、呆然としているピストンに礼を取る。
「私、戦闘しか知らないメードですことよ。何かご不満がございまして?」

「むきぃ~ 覚えてらっしゃいっ!」
完膚無きまでに打ち砕かれたピストンは、ハンカチを加えて逃げ出すしかなかった。。。

---*---

結局タルクは廊下の隅っこで落ち込むピストンを引きずって藩王に謁見。
無事出発の報告を済ませて、二人はえ~藩国へ向かうこととなった。


 え~藩国出張記 第3話 「平和の価値は」 につづく

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